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ザイム真理教 [読書感想文]

 財政均衡主義vsMMTと言うトンデモ大戦

ザイム真理教

ザイム真理教

  • 作者: 森永 卓郎
  • 出版社/メーカー: 三五館シンシャ
  • 発売日: 2023/05/19
  • メディア: Kindle版

 「安倍晋三回顧録」で安倍元総理が財務省への強い不信感を持っていたと言うのはもう読んだ人も読んでいない人もご存じだと思います。私も先日の研修会での講師が財務省から来た人で、研修の途中で「安倍元総理にそんな風に思われていたとは思いもしませんで」とか言い訳をしていてその時は得意の財政均衡主義トーンは抑え気味だったと言う。実は研修受講当時まさに本書を読んでいたのでこれ見よがしにテーブル上に置いていましたが受講者が300人以上いたので見えてはいないだろうな。

 そんな安倍晋三回顧録の流れを受けてってまさか数ヶ月で本書を書き上げたわけでもないだろうから、財務省叩きの内容だからと安倍元総理の顰に倣って加筆修正したのだろう。大手出版社に持ち込んでも断られた問題作と言うウリ文句ですがラジオにゲスト出演しては本書の告知をしてみたり、そもそも私が本書の存在を知ったのも日経新聞朝刊の広告でしたのでそんなに禁断の書でも無いと思う。


 いきなり森永氏と財務省と言うか旧大蔵省との馴れ初めから始まりまして、旧専売公社の社員時代にいびられた話なので、なんだこれは?私怨での意趣返しか?とガックリします。昔の役所はそんな意地悪な人は何処にでもいたと思うよ、私も閉庁間際に駆けこんだらわざとゆっくり対応された経験もあります。なので冒頭部分は野口悠紀雄氏の「戦後の日本型経済社会システムは~旧ソ連を手本とした計画経済体制が源流だ」と言う1940年体制の方が読みたくなりましたよ。

1940年体制―「さらば戦時経済」

1940年体制―「さらば戦時経済」

  • 作者: 野口 悠紀雄
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2023/06/29
  • メディア: 単行本

 これは日ごろ大政翼賛会政治になった際に「革新官僚」が主流となり、敗戦後もそのまま官庁の申し送り事項として令和の世まで引き継がれているのだろうなと感じる事が多いのでとても納得。森永氏の「財務官僚は東大法学部出だから経済学にはからきし弱い」と言う見立ても「財務官僚は東大法学部出だから今でもマルクス経済学を叩き込まれている」なら大いに頷いたのに。先日も計画経済の頭な大蔵省OBの論文を読んでイノベーションなんて考慮すらした事無いのかもなと言う感想を持ちました。

 さて、財政均衡主義叩きは良いのですがその理論的な根拠がMMT(現代貨幣理論)と言うのも困った。安倍元総理を引き合いに出したのだからアベノミクスのバックボーンなリフレ派で良いんじゃないのかな。MMTと言えばもう何年もトンデモ理論としてだいたいの経済学者が悪く言うアレなので、プライマリーバランスvsMMTだと昔流行った究極の選択的な何かになる気がする。確かに森永氏が言う通り赤字国債の発行残高が増えてもほとんどを日銀が買い入れても何も起きてはいないので、MMT叩きは財政均衡主義者の論陣なのかもしれないと言う複眼的な思考が多少は出来るようになるのは本書を読んで一番良かった部分かもしれない。

 後半、と言うか末尾部分はもう財務省関係無く片端から読者のルサンチマンを煽ってやろうと言う論調になって読後感はかなり胡散臭い。むしろ財務省叩きのイメージを悪化させて逆応援しているのでは?と勘ぐってしまった。


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