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ザ・ゴール [読書感想文]

 読んだのは昨年の緊急事態宣言発出時でした。

ザ・ゴール

ザ・ゴール

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: Kindle版
The Goal: A Process of Ongoing Improvement (English Edition)

The Goal: A Process of Ongoing Improvement (English Edition)

  • 出版社/メーカー: North River Press
  • 発売日: 2014/07/01
  • メディア: Kindle版

 実に550ページもあるのですが外出自粛中とはいえ2日で読破、と言うのはビジネス本ではあるけれども小説仕立てなんですよコレ。ハヤカワや創元社の翻訳小説に慣れ親しんだ人ならすぐに読む事が出来ると思う、私は読みながらジェフリー・アーチャーの「百万ドルをとり返せ!」を思い出していました。本当に文体や話の流れが翻訳小説そのものなので楽しく読み進める内に「ボトルネック」だの「部分最適と全体最適」とかビジネス書でよく目にするフレーズを理解できる様になっています。

 テンポ良くポンポンと読み進めると日本語版の初版は21世紀に入ってからなのに本書の舞台は80年代初頭のアメリカ地方都市、今ならラストベルトと呼ばれていそうなエリア。主人公もベビーブーマー世代なので今ならコロナ感染して死亡が心配されている世代だわ。劇中はジャパン・アズ・ナンバーワンな時代なので市場を日本製品が席巻してもう競争すら諦めている感もあり、日本人としてもそんな時代もあったよなと昭和は遠くなりにけりですよ。

 本部から来た上司のベンツが3万ドルで高級車って今時のハイト軽ワゴンをフルオプションにすればその位はしそうなので物価水準もかなり違う。仕事中に車でレストランにランチをしに行ってビールやワインを飲んでからまた工場に戻ってくるとか、この頃の欧米はアルコール運転の規制が緩かったなそう言えば。本社での会議中は喫煙OKなので葉巻をやる人まで登場して、いやこう言う部分は本当に昔と変わりました。


 40年前とのギャップを楽しむ一冊ではなく、小説仕立てのビジネス本です。主人公はとあるメーカーのラストベルトにある工場長で今日も予定通りに行かない出荷納品や労組対応に頭を悩ませているところに加えて妻は家出をして実家に帰ってしまうし更に本社サイドから業績の悪い工場は閉鎖すると通告されてしまうと言うまさに八方塞がりな感じにスタートします。

 そんな状況下に空港で偶然再会した昔の恩師に悩み事をぶつけてみると禅問答の様な答えが返って来て、それを工場の現状に落とし込んで反映させてみると問題点が明らかになり、次なる課題をまた教授にぶつけてを繰り返すと問題解決が出来た上に別居していた妻も帰って来て万歳。実に仕事の問題も家庭内の問題も原因は一つだった、と言うのがザックリとしたあらすじ。

 ただし、80年代ですから教授と連絡を取るのも電話なので大変です。今みたいにメールやSNSなんて無い時代ですからね、私もそれでも連絡付けたり待ち合わせしていたので当時はそれが出来て当然だったのですけれども。問題解決には工場内のスタッフでチームを組むのが良いですね、地方都市の工場にスーパーマンみたいなドリームチームが集結していたら嘘くさいですからね。ありもので何とかするのか現実社会での問題解決のお約束ですし。

 著者が日本人にだけは読ませたくないと言ったのが逆にセールストークになっている一冊ですが、残念ながら40年後の日本人は見る影もない有様なのでもうちょっと早く翻訳しても良かったんじゃないだろうか?今ならば日本人ではなく中国人と言う事になるのでしょうかね。現代に舞台を置き換えるならば主人公の工場長はマイノリティの女性で問題解決のチームも有色人種ばっかりになりそう、本の帯には「家庭も仕事もあきらめない!」とか書いてありそうです。いや、本書に登場する工場の経理担当者は日系人の公認会計士か。


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