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論語と算盤 [読書感想文]

 渋沢栄一の論語講義をいつ果てるともない調子でダラダラと読んでいるのですが、そこに来て今年の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公が渋沢栄一なので昔読んだ論語と算盤の方も引っ張り出して読み返してみた次第。論語と算盤は今年はブームと言う事で色々な出版社が色々な版を出していると思いますが角川ソフィア文庫版は現代仮名遣いと当用漢字に修正した上でビジネス本風に章ごとの見出しを追加しています。

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 渋沢 栄一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2008/10/24
  • メディア: 文庫
論語講義 (1) (講談社学術文庫 (186))

論語講義 (1) (講談社学術文庫 (186))

  • 作者: 渋沢 栄一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/04/29
  • メディア: 文庫

 因みに論語講義は渋沢栄一が論語の講義をすると言うよりは論語をマクラに幕末明治の元勲やら志士の思い出話を語ると言う態で面白いからお勧めです。講談社学術文庫ですので現代仮名遣いや当用漢字と言う配慮は一切無い上に返り点を振った白文が出てくるので読む練習をするのも楽しいですよ。

 論語と算盤の方は書き下ろしたとか口述筆記とかではなく方々での訓話をまとめて昭和2年に刊行された本だそう。言うなればビジネス本自己啓発本の類です、今でも池上彰や大前研一辺りなら雑誌の連載や講演をまとめた本が出ていますがそんな感じ。ですので昭憲皇太后の歌の引用が続いたりするのは仕方ない。大河ドラマの方はこの論語と算盤からネタを拾っていて、先日修験者を栄一が言い負かす話を放送しましたがアレは論語と算盤。なので二宮尊徳の件で西郷隆盛と問答する話もやるかもな?とか思いつつ読み進めるのも楽しい。


 今は世に渋沢栄一関連が溢れているので何を今更ですが、江戸時代には武士階級は空理空論な学問の為の学問と言う形で論語(朱子学)を学び商人は学問をしなかったと言うのはよろしくないから近現代は商売人もしっかりと勉強をしようと説いている本。論語はその朱子学のお陰で誤解されている上に甚だイメージが悪いが、真の論語と言うのはそうではない、孔子も老子も商いや蓄財を否定してはいないと言う事を世に知らしめたいと言う熱い一冊。

 今時は何でも西洋式を貴ぶのはよろしくないとも言っているのは、徒然草でも「遠き物を宝とせず」(第120段)と兼好法師が苦言を呈していたり「唐物愛」などと言う言葉が昔からあり、現代でも「出羽守」と揶揄される海外をやたらと有難がる御仁がいるのでそこは古代から恐らく未来まで変わらないところでしょう。それでいて当時最新だったであろうテーラーの科学的管理法をしっかりと抑えてアメリカ人の効率の良さを絶賛しているのは盲目的に有り難がるのではなく良い所は取り入れようと言う事なのでしょうね。

 大正時代ともなれば明治維新の創業時代ではなくなっている様で、栄一翁が聞き及んでいる世間の言い様は何か現代に通じる物もあるので内容が古いと言う事は無いです。但し論語精神を説いてはいますが論語からの引用はそれほどないのでこの本を読んだからと言って論語通になると言う事はありません。最初の方に私の好きな「子曰、視其所以、觀其所由、察其所安、人焉廋哉、人焉廋哉」が引用してあるのでそれは暗記して欲しいです。

 大河ドラマでは以前行った「日本郵船歴史博物館」でも紹介されていた共同運輸会社を作って三菱とガチ喧嘩をする展開は是非やって欲しい、論語講義で岩崎彌太郎の人となりを評しているんだし。それと4月放映分では攘夷思想にのめり込んでいた栄一が後年サンフランシスコでの日本人排斥運動に胸を痛める場面ではちゃんと回想シーンも入るかな?とかドラマの予習に読んでも良い一冊。


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