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成功する人は偶然を味方にする [読書感想文]


成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

  • 作者: ロバート・H・フランク
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2017/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
Success and Luck: Good Fortune and the Myth of Meritocracy

Success and Luck: Good Fortune and the Myth of Meritocracy

  • 作者: Robert H. Frank
  • 出版社/メーカー: Princeton Univ Pr
  • 発売日: 2017/09/26
  • メディア: ペーパーバック

 翻訳タイトルの「成功する人は偶然を味方にする」と言うのはクランボルツ教授の「その幸運は偶然ではないんです!」をどうしても連想するので久々プランドハプンスタンスセオリーについて読み返したので、結果的に一冊で二度おいしい読書体験が。ビジネス本や自己啓発本は読んだそばから売ってしまうのですが、本書は手許に残しておきました。

その幸運は偶然ではないんです!

その幸運は偶然ではないんです!

  • 作者: J.D.クランボルツ
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2005/11/18
  • メディア: 単行本

 しかし結論から申し上げますと、この二冊の内容にほとんど関連性は無いと言う。つまり「成功する人は偶然を味方にする」と言う邦題はちょっと前に新書で流行った「何故~は~のか?」の様に出版社サイドからの手に取らせる為の仕掛けであって、原書タイトルの「SUCCESS AND LUCK」により近い副題の「運と成功の経済学」の方が正しい本来あるべき邦題だったと言う。

 邦題ですと何やら自己啓発本かと勘違いしてしまいますがそうではない、成功した人は成功を己の努力や実力の賜物だと思いがちですがその要素よりも実際は運の占める割合の方が高いという内容です。先進国に生まれた・親が教育のある人だった・良い環境で育った・大学入学や就職試験の際に偶然上手くいったと言った運の要素が非常に大きかったのが原因であると言うある意味身も蓋も無い内容です。


 と言うよりも、その運と成功について事例を挙げつつ掘り下げて体系化するのではなく、著者が提唱する「累進消費税」なるものの導入を求めるパンフレットなのだな。経済学者の仕事は論文ではなくパンフレットを書く事であると言ったのはケインズですが、本書は正しくソレです。そうなるとクランボルツ教授と比較読みまでした私の立場は?と思わないでもない。累進消費税は日本の消費税の様な間接税ではなく所得税の様に確定申告をする税で、所得税の様に収入から経費を差し引いた儲けに課税するのではなく、個人の年間支出額に応じて累進課税する制度だそうです。

 本書はアメリカでアメリカ人向けに書かれたパンフレットなので、累進消費税の狙いも近年富裕層の富裕さ加減が凄い事になっているのに税金を払おうとしないアメリカを念頭に書いている。なので本書に登場する左派と右派だの保守派だのリバタリアンと言うのは日本で言うところと意味が逆になっているまま翻訳されているので正直かなり混乱します、そこを汲み取らずに安易に日本に当てはめるとおかしな事になってしまう。

 日本では無駄と言われる事もある公共事業について、アメリカでは逆にやらなさ過ぎるそうで。ティーパーティ運動の様に税金を払わない事を求めると穴だらけのハイウェイや老巧化した水道と言ったインフラで困るのは担税力はあっても納税意識が低い超富裕層も同じだろうと言う事、国や州政府の税収が増えれば引き続き豊かなインフラや教育を享受し次世代に引き継ぐ事が出来るので贅沢はほどほどにして寄付ではなく税金を沢山払いましょう。そう言えば日本でも人気のジープ・ラングラーもアメリカでは穴だらけの酷い舗装路を走るのに良いから人気があると聞きました。

 なのでタイトル買いするとガッカリする内容かな、翻訳も時々残念だし。フランク博士が九死に一生を得た幸運そのものの話の対比に、元ELO(エレクトリックライトオーケストラ、70年代に活躍したロックバンド)のチェリストが全くの不運で命を落とした話が載っていましたが、時系列が未整理で読んでいてかなり混乱しました。昔ファンだったのでショックでしたよ。

 幸運について書かれた本ならばやはりクランボルツ教授の「その幸運は偶然ではないんです!」を読むべき、キャリア形成に関する話なのですが自分の特定のキャリアへの興味や関心をアクティブにして何かアクションを起こせば失敗や想定外の偶然が起きても引き寄せが出来ると言う前向きな話。何もアクションを起こさなければ何らのリアクションも期待出来ないから先ずは何かやってみよう、「成功する人は偶然を味方にする」でも職業や子供の学校についてアクションは起こしているか。


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