前農業経営アドバイザー研修指定テキスト。
希望の日本農業論 (NHKブックス)
- 作者: 大泉 一貫
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/07/18
- メディア: 単行本（ソフトカバー）
日本政策金融公庫が農業経営アドバイザー制度と言うのをやっておりまして、受験しようかなと。しかし夏の試験はコロナ禍で中止になった模様。９月７日に来年１月の試験募集を開始して締切は１８日までとのんびりしていたら３日後の１０日に定員に達して募集終了していてビックリした、来年４月の募集で開始と同時に申し込むしかない。夏前に教材一覧を見ていたら本書が紹介されていたので取り寄せた次第、しかし現在では同じ著者の最新刊に入れ替わっています。
フードバリューチェーンが変える日本農業 (日本経済新聞出版)
- 作者: 大泉一貫
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2020/04/01
- メディア: Kindle版
と、言うのは本書は２０１４年版であり６年前の書籍なので通常ならばそこまで情報が古くもならないだろうと思いきや、２０１８年に米の生産調整が廃止される事となっていたのでそれ以前とそれ以降では日本の農業を取り巻く環境が変わってしまったから。本書では２０１８年に減反廃止が予定されているが、延長になるかもしれず予断を許さないと言う論調でしたが２０２０年の今では予定通り廃止となってさあどうなるか？と言う流れです。
本書は２０１４年時点での日本の農業を取り巻く主に行政サイドの農政を問題として捉えて、加えてＪＡの問題とそもそも農業従事者のみならず現代日本人が普遍的に持っている日本の食料自給率は低く補助金漬けの農業は国際競争力が無いと言う思い込みの誤りを糺しつつも、海外の農業国の傾向を分析して日本の農業の目指すべき方向性を提案する正しく希望の一冊。
その海外の農業を、主に途上国で見られる自国民の消費分確保を第一の目的とするものと、広大な国土を持つ国の大規模農地で輸出用農産物の生産をするものと、最後に高付加価値な農産物を輸出する物と分類して、日本の目指すべき方向は３つ目の成熟先進国型農業であるとしています。そして進むべき道を示しつつそこに至るまでにある現状のボトルネックを列挙しています、問題点の最たるものは今の官僚制度でして本書で言う１９４０年体制であると言う事。
それは何かと言うと５１５事件だ２２６事件だの後に大政翼賛会時代となり、明治政府時代に欧米を手本に整備された官僚機構が国家社会主義的な革新官僚に刷新されてしまったと言う事。敗戦で軍国主義時代の政治家や職業軍人は一掃されたものの何故か革新官僚はそのまま温存されてしまい、前例踏襲主義な官僚機構の中で伝統として国家総動員法時代の職能組合制度がそのまま現代まで生き延びているのではないか？と、そこまでは書いてませんがそんなのが著者の見立て。
ある意味旧ソヴェトのコルホーズの様に計画生産だけ担当して販売についてはノータッチであると言う戦後農家の分業体制がまさにソヴェト末期の様に労働意欲を削いでしまい、生産物の販売ではなく補助金を貰う為にする農業になったのが良くないとか。農水省も補助金の予算ばかり計上しているので農業振興名目でお金をかけている割に非効率が解消されないままになっていると言う指摘、こんな過激な言い方は微塵もしていませんよ。為念。
そんな統制経済や計画経済も第二次安倍内閣時代の「攻めの農林水産業」への転換でグローバル経済の中で諸外国と戦う力を持つ産業への返還を目指す方向に切り替わったとか。安倍内閣と言うとマスメディアのとりあえず叩いて悪く言えば良いみたいな風潮ですが本書は単行本なのでそんなの関係無い、むしろ直前の旧民主党政権が農家へのバラマキ保障をしたのが比較されてちょっと可哀想。と言うのも攻めの農林水産業は旧民主党版もあったそうなのですが、目先の選挙対策で封印したりと迷走したのが残念だったねと言う話。
米の生産調整を数年後に控えて戦後農政の総括と今後進むべき道を著者の視点と主観で述べた一冊でして、万人受けするかと言うとやや偏った内容ではありますが私も普段仕事をしていて１９４０年体制が行政サイドに深く根付いているのを感じる事も多く個人的には頷ける内容でした。稲作中心に農政用語が色々と登場するのですが解説付なので門外漢でも問題無いので、本書を読んでおけば日経の商品欄に登場する用語の意味もわかるので試験云々は横に置いても読んでみる価値はある一冊。
１９４０年体制(増補版) ―さらば戦時経済
- 作者: 野口 悠紀雄
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 単行本