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隷属への道 [読書感想文]

 2008年刊行のハイエク全集新装版うちの一冊を読み直す。

隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 単行本

 とてもスラスラと読む事が出来る内容ではない上に仕事の繁忙期に入ってしまい半年近くダラダラと読む羽目に、その間にロシアのウクライナ侵攻が始まってしまったりで本書の内容が古くなる事は無いね。1940年から44年と言う第二次世界大戦のさなかに書かれた本人曰くパンフレットです。古典的な自由主義を良しとするハイエクが昨今の計画主義の蔓延は良くないですねと警鐘を鳴らしていますが2022年になっても状況が全然変わっていないのが何とも言えない。

 ハイエクの言う自由主義は競争を前提とした機会が平等に与えらえる状態なのですが、それでは富が競争の勝者に偏在して不平等であると考える皆さまは計画して公平に分配すれば真に平等な社会になると主張します。昨今のGAFA見るとそうかもと思ってしまいますが、その分配の計画を誰が立てるか?と言うのが問題です。行き過ぎた市場経済に反対して分配を求める人は自分がその計画の立案者になると言う前提で話しているのが問題。岸田総理大臣なら役職でそうでしょうけど、今風に言うと覇権主義国家の独裁者が計画の立案者にならないと言う保証も無いので。

 高学歴のインテリほど集産主義(社会主義・共産主義・ファシズムなどのハイエクによる総称)が自由主義よりも優れていると思いがちなのは富の偏在を悪い事と考える全くの善意からのものでしょう、でも自分が計画の決定者になると言う前提ありきの話なのだな。本書の時代ではバーナード・ショウやらHG・ウェルズ等今日でも名が知られたインテリの名前が計画の信奉者として登場します。当時すでにヒトラーやスターリンは悪い人と言う認識だったようですが、彼らも生まれついての極悪人ではなく計画や決定を下す責任者としての地位や立場が結果悪人となる事を強要しただけだろう。

 集産主義者の引用が多い本書ですがハイエクの主張寄りの引用では若き日のピーター・ドラッカーが登場するのが胸熱展開です、ハイエク同様オーストリア出身で英米に出国していたドラッカーも30年代に「『経済人』の終わり」と言う本を出しているからそこからの引用です。戦後に書かれたそれこそナチスと同根かも知れない連中の書いたナチス批判本よりもリアルタイム批判本でこれは面白いから隷属への道を読む人なら併せて読むべきかな。

「経済人」の終わり―全体主義はなぜ生まれたか

「経済人」の終わり―全体主義はなぜ生まれたか

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2022/05/02
  • メディア: 単行本

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