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葛西城とその周辺 [読書感想文]

 関宿城博物館の売店でゲット、すると「葛飾区郷土と天文の博物館」でやっていたらしい地域史フォーラムをテキストに起こして出版した本だった。

葛西城とその周辺―葛飾区郷土と天文の博物館地域史フォーラム

葛西城とその周辺―葛飾区郷土と天文の博物館地域史フォーラム

  • 出版社/メーカー: たけしま出版
  • 発売日: 2021/05/22
  • メディア: 単行本

 因みに地域史フォーラムの4回目が葛西城だったそうで特別区の博物館学芸員の方もこんなに濃いテーマで開催するとか凄いよなあ。と思ったけれども先日行った大田区の郷土博物館でも出土した土器への考察が熱かったので何処の学芸員さんもこれ位の勉強会は出来るのだろう。郷土と天文の博物館は展示内容を入れ替えてしまいましたが以前は葛西城に関する展示がとても充実していたのでこう言ったフォーラムの研究発表がフィードバックされていたのだろうな。

 葛西城なるものは葛飾区青戸の環七と水戸街道が交差する場所からやや南に存在していたそうです、現在も環七を挟んで東西に城址公園と城跡の碑が立っているので見に行かねば。その環七建設の際に城址部分の中央部を潰してしまう前の昭和47年に発掘調査が行われた際の出土品は郷土と天文の博物館で見たかな。葛西と聞くと葛飾区の南に位置する江戸川区のこれまた南端のイメージですが、巻末の文章を読むに文字通り葛飾の西部と言う事でならば千葉県の松戸市は葛東ですと言われるとなるほどと納得してしまう。実際の地名は東葛なのでなんで東西で言い方変えるんですかね。


 そんな場所に存在した葛西城、東京近郊の城跡と言うならば横浜市の小机や現センター北の茅ケ崎などと案外方々に実は有るので郷土史と言うものは調べてみると本当に面白い。葛西城は室町時代に存在して江戸時代には城跡に青戸御殿と言う将軍家の休憩場が作られて家康や秀忠が鷹狩の際に利用していたと言うのは何かで読んでいましたが、本書の巻末にある質疑応答コーナーには明暦の大火で焼けた江戸城の補修材とするために解体されたとあり、そんな理由で解体されて払い下げられていたのか。

 フォーラムの音声での発表そのままでして発表者が各自決められたテーマで話をしている。と言う中で発表者の中には今年「図説享徳の乱」を上梓された黒田基樹氏もいますね、既に他の発表者から一目置かれていて本書でも「最新の資料に基づく」発表をされています。しかしこの「図説享徳の乱」も本書刊行後20年間の資料の集積があったにちがいないとも思う。

図説 享徳の乱

図説 享徳の乱

  • 作者: 黒田基樹
  • 出版社/メーカー: 戎光祥出版
  • 発売日: 2021/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 とは言っても享徳の乱だけでは葛西城の生涯を語り尽くすには全然足りない。享徳の乱での登場人物である古河公方や太田道灌のみならず、それ以前からの伊勢神宮の支配地から上杉氏北条氏と言う戦国大名の名前まで登場すると言う。先日行った千葉市立郷土博物館で1フロア使って千葉氏の話を紹介していたり、館山市立博物館での里見氏の展示が全てこの葛西城にも関連して来るのが今更分かってもうちょっとしっかりと見ておくんだった。千葉城は気楽に行く事が出来る距離ですが流石に館山は遠い。

 なのでセンター北にある横浜市の博物館はまだ行かないようにしようと思った、上記の小机城やら茅ケ崎城の話も出てきそうですし。そんな戦国時代の話ばかりではなく室町時代の農民と支配者層との関係の紹介に当時の葛飾地域の話も興味深い。現在銚子まで流れている利根川は東京湾に河口があったし現荒川こと荒川放水路も人工河川でして、挙兵した源頼朝が筏で渡る隅田川も河川改修前の葦原の中と言うイメージでした。しかし葛西城付近は旧水戸街道沿いに宿場があったと言う報告でそれは知らなかった、微高地で河川の氾濫でその都度水没した不便な土地でもなかったとか。

 図説享徳の乱も本書で興味が出て買ってしまいました、本書は葛西城を切り口に室町時代の関東地方での支配体制を解説する本です。学校の教科書ではあまり教わらない部分な上に登場人物の名前が似ているので頭に入りませんが流れを掴んでから更に調べようと言う足がかりには好適な一冊です。


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