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大名格差 江戸三百藩のリアル [読書感想文]

 コンビニ本風でもありまとめサイト風でもあり。

大名格差 江戸三百藩のリアル

大名格差 江戸三百藩のリアル

  • 作者: 安藤優一郎
  • 出版社/メーカー: 彩図社
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: Kindle版

 昨年末日経朝刊に広告が出ていて面白そうだから入手、実は一時屋敷門マニアになろうかな?と考えつつも思いとどまった事があるので封建時代の身分制度には元々興味がありました。その屋敷門は本書179ページに図入りで格差を説明していますが、何も大名に限らず農家でも格に応じて門構えが違っているので江戸時代の格差は平成から令和のフワフワした平等意識をバックボーンとする格差ではなく歴然と存在していたので調べると面白いです。

 何せ御家人や藩士でも石高で登城の際の乗り物から家来の人数に着物の生地まで変わったりするので、下手に出世したら今度はそう言った物のやりくりに苦労する話に事欠かないし。しかしこの石高なる物は江戸時代260年間ロクに見直しがされていないので、その間の新田開発や農業技術の改良による収穫量の上昇やインフレによりコメの相場がドンドン下がって一貫して武家の困窮化が進んだと言う笑えない流れなのが何とも。やはり朱子学の頭じゃ市場経済なんか理解出来ないんだろうな。


 それはさておき、本書はタイトル通りに江戸時代の大名間格差についての一冊です。冒頭に書いた通りコンビニ本みたいな体裁になっているのは出版社サイドとしては今はそう言うスタイルの方が売れると判断したのでしょう、もうちょっとメジャーな出版社だったら新書になっていたかもしれない。まとめサイト風に小分けにされた章と言うのも今時の読者に合わせたのでしょうけど、スマホ世代ってどれだけ集中力が続かないと思われているんだか。

 タイトル通り江戸時代の大名の話ですので、大名の定義や徳川家との関係から入ります。徳川家康も豊臣秀吉時代は五大老五奉行の一員として同格だった戦国大名を今度は外様扱いするわけです。また、その徳川一族でも家康の直系である御三家や8代将軍吉宗の直系である御三卿やらあるいは室町幕府時代の足利将軍家の子孫などがいるので幕府としてもそれぞれの家格や徳川将軍家自身の権威付けの為に取り立てざるを得ないと言った苦労話が延々と続きます。

 それじゃ大名の格差と言うより内輪の格差じゃないのとも思うところですがその辺りの話を整理しないと大名まで話が進まないので。ですので格差そのものよりも幕藩体制で徳川家が大名をどうやって抑え込んだか?に興味が無いと前半部はあまり面白くないと思う。それでも日本史で習った親藩・譜代・外様と言う括りが案外そのまま大名格差に結びつかないのだなとか読んでいて感心する話は多いです。

 一番なるほどなと感心したのは江戸城内での行事に参加する大名の話でして、本書のタイトル通り三百諸侯の半分が江戸に出ているとすれば150もの大名が当日江戸城に殺到するわけですよ。江戸城はお城と言うか軍事拠点ですから入り口は限られていて、そこに親藩・譜代・外様なんて言う格付けされた大名が集まるので一大事。更に加えて石高や城持ちか否かで更に格差があるので他所の行列に出くわした場合には格下大名は平伏するしかない、メンツを考えるとそれは避けたいので格上の行列には出くわさないよう回り道をするから大名屋敷から目と鼻の先の江戸城に向かうのに2時間ほどの時間を見ているとか。

 それぞれの大名が格や石高に応じてそれなりの家来を連れて大手門に殺到、しかしそこから江戸城内に随伴出来る家来は大名の格に応じて違うけれどもほとんどは殿様が戻ってくるまで大手門前で待機していたとか。そうなるとその侍相手の屋台が出たり暇な家来衆の乱暴狼藉が起きたり、はたまたそんな待ちぼうけな藩士たちの見物に来た観光客もまた屋台の上客だったとか。こんな話は時代劇でも描写が無いし歴史の教科書にも出て来ないので面白い、と言っても本書は本当に「まとめサイト」だからこれも他の文献から孫引きした話ですけど。

 参勤交代で江戸に来た大名がその大手門の大混雑を抜けて城中に入っても様々な格差で応じて控えの間から将軍の挨拶まで違うそうで、身分制社会と言えど競争原理の働く余地はあるそうで任官運動と実力でのし上がる事も可能だから格差社会と言っても現代同様に上がったり下がったりはするので固定されているのでも無いなと。むしろあまり歴史のある上位の家系は権威化し過ぎて実権力は失うのだなと言うのが徳川将軍家筆頭に感じるところであまり偉くなり過ぎるのも良くないかなと思う、それは令和の現代社会にも通じるところでしょうけど。


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