SSブログ

利根川図誌 [読書感想文]

 相変わらず利根川の東遷にはまっているので何か関連文書かな?と思い古本屋にて購入、先日行った関宿城博物館に複製本が展示されていました。

利根川図志 (岩波文庫 黄 203-1)

利根川図志 (岩波文庫 黄 203-1)

  • 作者: 赤松 宗旦
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1938/11/15
  • メディア: 文庫

 岩波文庫と言えば研究者向けの副教材と言う体裁をとる事が多いので、原書そのままの文章でも無いしさりとて現代語訳と言っても半世紀以上昔の翻訳でとにかく読み辛い事が多いのですが本書は初版が1938年だけに原書のまま旧漢字・舊仮名のままなのが良いです。現在の平仮名が本当に定着したのは戦後であって戦前までは当て字の様な万葉仮名が平気で使われていたので舊仮名は読んで慣れるしか無いです。

 岩波文庫版は冒頭に柳田国男が本書の紹介をしています、それを読むと図版を基本葛飾北斎が担当している事や版木職人が手を抜いて漢字が間違っている例もあることがわかります。「図志」なので文庫本ながら豊富な図版と地図が載っていますが、本書に限らず江戸時代の地図は下側が北なので何ともわかり辛い。利根川で地図と言えば伊能忠敬ですが本書には関係していないし、流域住民で昔の地名に詳しい人でも無ければピンと来ないと思う。


 冒頭にいきなりカッパが登場して、子供の頃より妖怪図鑑で慣れ親しんだカッパの図が載っているので、これも柳田国男の解題からすると葛飾北斎の手によるものなのだろうか。利根川流域の神社仏閣の由来やら地名、古戦場や城址に集落の由来が上流から下流に向けて延々と書き綴ってあります。頑張って冒頭から末尾まで読みましたが、巻頭に目次があり巻末に索引があるのでとにかく入手だけして調べものに使うのが便利かな。と言うのも、本書も膨大な書籍類からの転載でほぼ成り立っているから。

 今なら「利根川ポータル」とでも言う体裁で、引用元へのリンクと書き出し部分をコピペしたようなお手軽な作りなのですが、それを江戸時代にやると先ずは引用元の原書に一旦は目を通してそれを書写するのだから大変な作業です。ネット時代なら簡単な作業が膨大な蔵書と博物学的知識の裏付けが無いと出来なかったのだなと、逆に言えばネットの知識で学者モドキに誰でもなる事が出来る現代は良いのか悪いのか?

 そんなんで「コピペ」元が古い文献であるともう文章も舊漢字どころか何この文字?とか梵字なぞも出てくるし、漢文が丸ごと転載されている場合は白文ではなく親切に返り点が振ってあるのですが、一二三点上中下点までなら何とかなるものの甲乙丙点まで行くともう何が何だか。漢字には仮名が振ってある事も多いので時間をかけて読めばそれほど大変ではないのですが。

 面白さもその文献次第なのか?古戦場や城址の紹介で引用される戦記物はテンポが良くて読んでいて楽しかったりします。社寺の縁起は開山は弘法大師だとか本尊は歴史の教科書に出てくる鎌倉時代の仏師やら弘法大師その他高名な僧侶の手による物とかいささか話を盛り過ぎてるんじゃ?と言う調子。伝承をそのまま載せているだけなのですけど、逆に千葉と言えば日蓮上人かと思いきや案外日蓮宗の寺が無い。成田山新勝寺に香取神宮・鹿島神宮と言った有名どころはページを割いて紹介していますが、小さい祠や地蔵尊まで紹介しているので流域の郷土史を調べる時には使えるかと。

 私もこれを読んでからかなり経って関宿城博物館に行って、今目次を見ていると件の関宿城の由来なぞも紹介されているのに今更気付いたりね。関東郡代伊奈氏による利根川の東遷については全く触れられておらず幕末期にはそんな事は忘れられていたのだろうか?水害についても特に触れてないのは著者の興味の外なのか幕府批判になってしまうからなのか?


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。